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 どこかおかしい感情だという事は理解しているつもりだ。
 本来ならば異性に対して当てられるべきそれは目の前の剣豪に向けられている。しかし理屈で感情をどうにかできる術を生憎ぼくは持ちあわせていない。
 どんな風に笑うのか。どんな癖があるのか。もっと近くで見ていたい。ぼくだけを見ていてほしい。
 けれどもいくら言葉に乗せても彼には届かない。気づいていないのか、或いは子供の戯言と取られているのか。
 空いている手を取り、節くれ立った指先に掠めるように唇を落とす。手を払う事すらしない彼の様子をちらと伺えば困ったような表情を浮かべていた。
 言葉では伝わらない。だから時折呼び出してはこうして恋人のような真似事をしているのだけれど、決まって彼は同じ顔しかしない。
 でもそれでいい。こんな事をする人も、そんな表情をさせる人も、今はぼく一人しか居ないのだから。
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